第2創業期② 〜LOCK’Y〜

二〇十一年は、百菜のれんわけ、ぶちくさらぁめん神辺店撤退と辛抱の年であった。

 

二〇十二年満を期してオープンしたのがロッキーだった。

横文字で書くと「LOCK’Y」はもともと「鍵の110番」の跡地であり、そこが閉店するというので店を見に行った際、百年以上前から天井裏にそびえる驚くばかりの太い梁と、驚くばかりの家賃の低さにほぼ即決の形で出店を決めた。

 

店の名前は自分で考えたんだっけか。LOCKとKEYの鍵同士を掛け合わせて「ロッキー」と決めた。ネットで検索したらシルベスタースタローンのあのROCKYしか出てこず、RではなくLのロックを採用して人類初のかっちょええ店名を創り出した。

 

工事は難航した…なぜなら空き家再生プロジェクトと自分とのコラボレーションでデザインしたから。相変わらず行き当たりバッチリ作戦で戦闘態勢。

 

岡山のアクシスから包装したままのマンチェスターで買い付け保管してたと言う百年前の螺旋階段を購入💦アクシスの大槻会長でさえどんな階段だったか忘れてたってんだから。

 

まだ誰も見たことがないこの螺旋階段を現場で包装を剥がして確認してみようや…から始まったのだから、図面もへったくれもなかった。

 

工事中、螺旋階段の一番上の重い段(おそらく百キロくらい)を四人でロープで引っ張ってる最中に、それがボキッと折れて落下した時は本当にヘタれこんでしまった。危ないにも程がある。

まぁ、それくらい想いを込めてつくったお店なわけだ。

 

こだわりがヤメられず、ヤフオクで購入した日本のデッドストックのタイルをこれでもかと言う程、壁面に貼りまくった。啓文社の倉庫で保管してた木箱をいただいたり、照明や家具も自分で買い付けに。装飾品は持っていた何十体ものジョニーウォーカーのデッドストック人形を並べまくった。

 

なので出来上がってから「ヴィンテージ酒場LOCK’Y」と言う店名に進化させた。

 

もはやこのお店を真似できる人間はそういないだろう。

百年以上前の建物に加え、外国の部屋を彩っていた七十年代の照明や、わけのわからない人形群…横尾忠則。尾道の歴史を刻んできたモノたち…危なっかしい螺旋階段さえも愛おしい。

 

そんなことが出来ること、感じられること。それが自分にとっての強みでもあると自負している。

 

ただ、サンセバスチャンへ行って学んだわけだからもっとピンチョスをカタチにせねばと課題も盛り沢山って日々。